「建て得を選んだのに電気代が思ったより高い」という声は、太陽光発電を導入した住宅を持つ人からよく聞かれます。太陽光発電が実質0円で載るという仕組みには大きなメリットがある一方で、電気代の面ではいくつかの見落としやすい特性があります。この記事では、建て得の電気代が高くなりやすい理由を仕組みの面から整理し、自家消費を増やすことでどこまで光熱費を抑えられるかを考えます。
建て得は、株式会社LIXIL TEPCOスマートパートナーズ(LIXILと東京電力エナジーパートナーが設立した合弁会社)が運営する、太陽光発電システムをZEH住宅にセットで導入できるサービスです。「実質0円で太陽光が設置できる」という点が注目されますが、同時に電気料金プランの仕組みや昼夜の電力コストの差を正しく理解しておかないと、月々の電気代に対して期待はずれの感覚を持つケースがあります。
電気代が高いと感じる背景には、いくつかの構造的な理由があります。それぞれを順に見ていきましょう。建て得をすでに利用している方にも、これから検討している方にも役立てていただける内容です。
建て得の仕組みと電気代の基本的な関係
建て得で電気代をどう理解するかは、サービスの仕組み全体を把握することから始まります。太陽光が「実質0円」になる代わりに何が変わるのかを整理すると、電気代の動きが見えやすくなります。
実質0円の裏側にある売電収入の譲渡
建て得バリューは、太陽光発電システムを15年ローンで購入し、その間の余剰売電収入をLIXIL TEPCOスマートパートナーズに譲渡することで月々のローン返済を相殺する仕組みです。つまり、昼間に発電してもその余った電気を電力会社に売った収入は契約期間中は住宅オーナーに入りません。
自家消費分、すなわち自宅で使った電気については0円で使えます。ただしその恩恵を受けられるのは昼間の発電時間帯に限られます。夜間や雨天・曇天の日は電力会社から電気を買う必要があり、この「買電コスト」が月々の電気代に直結します。
昼間と夜間で電気コストが非対称になる
建て得における電気代の特徴は、昼間と夜間で電力の単価が大きく異なる点です。発電している昼間は自家消費分が0円になりますが、夜間に購入する電気には通常の電力量料金がかかります。
共働きや学校で日中は自宅にいない時間が多い家庭の場合、昼間の0円電気の恩恵を受けにくい一方、夜間に多くの電気を買う構造になりやすいです。この非対称さが「太陽光を乗せたのに電気代が安くならない」という感覚につながるケースがあります。
・昼間の自家消費分:0円(発電量の範囲内)
・夜間・雨天時の買電:電力量料金が発生
・売電収入:15年間は住宅オーナーに入らない
・電気代が安くなるかは昼間の在宅・消費パターンに左右される
ZEH住宅の省エネ効果が下支えになる
建て得は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たした高断熱・高省エネ住宅を前提とするサービスです。断熱性能が高いことで、冷暖房に使うエネルギー自体が一般住宅より少なくなります。
LIXIL TEPCOスマートパートナーズが公開している平均電気代の実績データ(2023年4月〜2024年3月)によれば、太陽光発電のみの場合で月9,400〜21,459円、蓄電池を加えた場合で月5,746〜16,266円という目安が示されています(いずれも当該サービス利用者の平均値で、当時の政府補助適用後の数値)。ただし実際の電気代は住宅の条件・地域・家族の生活スタイルによって大きく異なります。最新の実績は公式サイトでご確認ください。
- ZEHの省エネ効果で消費電力を抑えられる
- 太陽光発電による昼間の自家消費で電気代削減につながる
- 蓄電池を加えると夜間の買電量も減らせる
- ただし電気代の節約効果はライフスタイルによって異なる
建て得でんきの料金プランと地域大手電力との差
建て得の電気代を左右するもう一つの要素が、電気料金プラン「建て得でんき」の料金水準です。この点は、導入前にしっかり理解しておくとよい部分です。
建て得でんきの3つのプランとその特性
建て得でんきには「プレミアム」「スタンダード」「ライト」の3段階があり、採用するLIXIL製品の種類・数によってどのプランに加入できるかが変わります。プレミアムが最も電力量料金が安く設定されています。
ただし、建て得でんきへの加入は任意です。LIXIL TEPCOスマートパートナーズ自身が「既存の電気料金の方がお得になる場合があります」と案内しており、2022年11月に加入を任意化した経緯があります。契約時に加入しないことも選択肢の一つです。建て得でんきの加入は建て得の新規契約時のみ可能で、解約後の再加入はできません。最新の料金条件はLIXIL TEPCOスマートパートナーズ公式サイトでご確認ください。
地域の大手電力会社プランとの料金比較
電気料金比較サービス「新電力ネット」などの情報によれば、建て得でんきの電力量料金は、複数のエリアで地域の大手電力会社(規制料金プラン)より高い水準となっているケースがあります。たとえば東京電力エリアでは300kWh超の段階での電力量料金が建て得でんきの方が高く設定されているという比較事例が報告されています。
地域ごとに料金体系が異なるため、自分のエリアの地域大手電力プランと建て得でんきを実際に比較することが大切です。LIXIL TEPCOスマートパートナーズ公式サイトの料金プランページと、各地域の大手電力会社の公式サイトで最新の料金を確認するとよいでしょう。
| 電気契約の選択肢 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 建て得でんき(プレミアム) | LIXIL製品を多く採用するほど単価が下がる設定 | 地域大手より電力量料金が高いケースあり |
| 建て得でんき(ライト) | サッシ・玄関ドアのみで加入可能 | プレミアムより割高な設定 |
| 地域の大手電力(規制料金) | 燃料費調整額に上限あり(規制料金の場合) | 建て得でんきを選ばなくても太陽光の恩恵は受けられる |
燃料費調整額の上限廃止が与えた影響
LIXIL TEPCOスマートパートナーズは、2023年1月分の電気料金より、建て得でんきにおける燃料費調整額算定の上限を廃止しました。これは同社が公式サイトで告知している事項です。燃料費調整額とは、火力発電に使う燃料(原油・液化天然ガス・石炭)の価格変動を電気料金に反映させる仕組みで、燃料価格が高騰した場合に上乗せされます。
上限がある場合は燃料価格がどれだけ上がっても電気料金の上乗せ幅が一定の範囲内に収まりますが、上限が廃止されると燃料価格の高騰がそのまま電気料金に反映されます。この変更が、建て得でんきを利用している一部の家庭で電気代が想定より高くなる一因となった可能性があります。燃料費調整額の最新動向は資源エネルギー庁または各電力会社の公式サイトで確認できます。
電気プランの見直しは建て得の新規契約時が唯一のタイミング

注意しておきたいのは、建て得でんきへの加入・非加入の選択は建て得の新規契約時のみ可能という点です。一度加入すると、解約後に再加入することはできません。また建て得でんきを解約して他の電力会社に切り替えることはできますが、その場合は地域の大手電力会社か新電力のプランに移行することになります。
建て得でんきを選ぶかどうかは、自分のエリアの料金水準と使用量のパターンを事前に確認した上で判断するとよいでしょう。
- 建て得でんきへの加入は任意で、契約時のみ選択可能
- 地域大手の規制料金プランより電力量料金が高いケースがある
- 燃料費調整額の上限廃止(2023年1月〜)で変動幅が拡大
- 最新の料金はLIXIL TEPCOスマートパートナーズ公式サイトで要確認
電気代が高いと感じやすいライフスタイルのパターン
建て得の電気代が高いかどうかは、仕組みの問題だけでなく、住む人の生活パターンと深く関係しています。どのような家庭で電気代が高くなりやすいかを知っておくことで、対策を考えやすくなります。
日中に自宅に人がいない共働き家庭
建て得で電気代をお得にする最大の鍵は、昼間の発電電力をどれだけ自家消費できるかです。日中に誰も自宅にいない共働き家庭では、冷蔵庫や待機電力以外にほとんど電気を使わず、太陽光で発電した電気は余剰となります。しかしその余剰分は売電収入にならず、夜間に改めて電力会社から電気を購入することになります。
エコキュートの沸き上げタイマーを昼間に設定する、食洗機を昼間に稼働させるなど、生活スタイルを少し調整することで自家消費量を増やすことができます。行動の変更はゼロコストで取り組める対策です。
蓄電池なしのプランで夜間使用が多い家庭
夜間に家族が揃って電気を使う家庭では、夜間の買電量が多くなります。蓄電池を搭載していれば昼間の余剰電力を夜間に使えますが、建て得バリューなど一部のプランでは標準で蓄電池がついておらず、夜間の電力は全量買電になります。
建て得でんちシリーズ(建て得でんち・でんちプラス)は大容量蓄電池とセットのプランで、昼間の余剰電力を蓄電池に貯め夜間や停電時に使える仕組みです。初期費用として工事費(建て得でんちは一律220万円、建て得でんちプラスは一律165万円)がかかりますが、夜間の電気代削減効果は大きくなります。工事費の詳細はLIXIL TEPCOスマートパートナーズ公式サイトでご確認ください。
冬場や雨天が多い地域・季節での電気代上昇
LIXIL TEPCOスマートパートナーズが公開する平均電気代の実績によれば、太陽光発電のみの場合、冬は月15,000〜21,000円程度と夏の約2倍近い金額になることがあります。これは日照時間が短く自家消費できる昼間の電力が減る一方、暖房需要が増えるためです。
季節変動は太陽光発電全般に共通する特性で、建て得固有の問題ではありません。ただし建て得では売電収入が入らないため、夏の「おつり」が冬の出費を補う仕組みはなく、年間を通じて月々の電気代をどう管理するかを意識しておくとよいでしょう。
・日中不在で昼間の発電電力を使えていない
・蓄電池なしのため余剰電力が夜間活用できない
・冬場や雨が多い地域で日照時間が短い
・夜間に家族の電力使用が集中している
- 共働き・日中不在の家庭は昼間の自家消費率が低くなりやすい
- 蓄電池なしのプランでは夜間の買電を全て外部から購入する
- 冬季は日照が減り電力需要が増えるため電気代が上がりやすい
- エコキュートのタイマー設定など昼間使用への切り替えが効果的
自家消費を増やして電気代を抑える具体的な方法
建て得で電気代を抑えるための最も現実的なアプローチは、昼間の太陽光発電電力をなるべく多く自家消費することです。売電はできない契約でも、自家消費は最大限に活用できます。ここでは具体的に取り組みやすい方法を整理します。
エコキュートの沸き上げ時間を昼間に変更する
オール電化住宅でよく使われるエコキュートは、お湯を沸かすのに電気を多く消費する設備です。従来は夜間の安い時間帯に沸き上げるのが一般的でしたが、建て得の場合は昼間の発電時間帯に沸き上げるよう設定を変えると自家消費量を大きく増やせます。
ただし建て得の契約条件によれば、おひさまエコキュート(昼間の太陽光発電を利用して優先的に沸き上げる機能を持つ給湯器)は標準では設置できず、別途オプションプランへの申込みが必要です。通常のエコキュートの沸き上げタイマー設定を昼間に変更するだけであれば制約にあたらないケースもありますが、詳細はLIXIL TEPCOスマートパートナーズに直接確認することをおすすめします。
家電の使用タイミングを昼間にシフトする
食洗機、洗濯機・乾燥機、掃除ロボット、炊飯器などを昼間の発電時間帯に稼働させることで、外から買う電力の量を減らせます。家電のタイマー機能を活用すれば、外出中でも昼間に稼働させることができます。
特に日当たりのよい春〜夏の晴れた日は発電量が多く、昼間に集中して電気を使ってもお得に活用できます。発電量モニターアプリ(建て得マイページ)で発電状況を確認しながらタイミングを合わせるとよいでしょう。
契約終了後の蓄電池・V2H導入を視野に入れた長期計画
建て得の契約期間(15年間)が終了すると、太陽光発電システムが無償でオーナーに譲渡されます。このタイミングで蓄電池やV2H(Vehicle to Home)を導入することが、長期的な電気代削減の有効な選択肢になります。V2Hとは電気自動車(EV)のバッテリーから自宅に電力を供給する仕組みのことです。
契約期間中は他社製蓄電池の後付けや発電設備の追加、EV給電設備の設置(別途オプション申込みを除く)が制限されています。15年後の時点では蓄電池の価格が現在より下がっている可能性があり、卒FIT後の売電単価が低くなることを踏まえると、自家消費型への切り替えが有利になる場面も増えています。今から長期的な視点でエネルギー計画を立てておくとよいでしょう。
・エコキュートの沸き上げを昼間に設定(オプション確認が必要な場合あり)
・食洗機・洗濯乾燥機を昼間タイマー稼働に切り替え
・発電量モニターを活用して晴れた日の使用量を増やす
・15年後の蓄電池・V2H導入プランを早めに構想する
建て得でんきの見直しも選択肢のひとつ
すでに建て得でんきに加入している場合、一度解約して他の電力会社プランに切り替えることも可能です(再加入は不可)。現在の電気使用量と料金明細を確認し、地域の大手電力の規制料金プランや新電力のプランと比較してみることが参考になります。新電力への切り替えを検討する場合は、各電力会社の料金プランや契約条件を公式サイトで確認の上、慎重に判断してください。
- エコキュート・家電の使用タイミングを昼間にシフトする
- 発電量モニターで発電状況を確認しながら活用する
- 15年後の蓄電池・V2H導入プランを今から考える
- 建て得でんきの料金を現在の地域プランと比較してみる
建て得の電気代と全体コストを整理するためのチェックポイント
建て得を検討している場合、または現在利用中で電気代について整理したい場合に役立つ視点を確認しておきましょう。電気代だけを切り取るのではなく、トータルのコスト構造を把握することが大切です。
昼間の在宅パターンで得られる恩恵は大きく変わる
建て得の経済的メリットは、昼間に発電した電力を自宅でどれだけ使えるかに大きく依存します。日中の在宅時間が長い家庭や、テレワーク・育児・介護などで昼間に電力消費がある家庭では自家消費率が高くなり、電気代の削減効果を実感しやすくなります。
一方、平日の日中はほぼ外出している家庭では、建て得バリュー(蓄電池なし)だと昼間の電気が余っても活用できません。自分の生活スタイルに照らして得られるメリットを事前に試算することが重要です。ハウスメーカーや工務店に生活パターンを伝えてシミュレーションを依頼するとよいでしょう。
契約期間中の制約と違約金のリスクを理解する
建て得は15年間の長期契約が前提です。引っ越し・売却・名義変更なども解約扱いとなり、残存契約月数に応じた清算金が発生します。清算金の計算式はLIXIL TEPCOスマートパートナーズの契約書に記載されており、契約前に必ず内容を確認することをおすすめします。
また、蓄電池・V2Hの後付け、発電設備の追加(カーポートへの太陽光設置など)、一部の給湯器など、設置できない設備の種類が多い点も確認が必要です。将来のライフスタイルの変化(EV購入・子どもの独立・転勤の可能性など)を考慮した上で、長期契約が自分の状況に合うかどうかを検討するとよいでしょう。
建て得以外の初期費用0円サービスとの比較も参考になる
初期費用を抑えて太陽光発電を導入したい場合、建て得以外にも複数のサービスがあります。PPA(電力販売契約)と呼ばれる形式では、事業者が屋根を借りてパネルを設置し、オーナーは発電電力を安く使う代わりに売電収入を譲渡する仕組みが基本です。
建て得との主な違いは、住宅設備のメーカー縛りの有無、対応する住宅会社の範囲、契約期間・清算金の条件などです。複数のサービスを比較検討する際は、契約の詳細条件を各社の公式情報や重要事項説明書で確認することが基本です。建て得を取り扱う住宅会社(ビルダー)については、LIXIL TEPCOスマートパートナーズの公式サイトで登録ビルダー一覧を確認できます。
ミニQ&A:よくある疑問を整理
Q. 建て得バリューで契約中、電気代が下がらないのはなぜですか?
A. 考えられる理由は主に2つです。1つは昼間の発電電力をほとんど自家消費できていないこと、もう1つは夜間の買電量が多く電力量料金がかさんでいることです。エコキュートや家電の使用タイミングを昼間に変えるだけでも改善することがあります。建て得でんきの料金プランが地域の大手電力より高い設定になっているかどうかも確認してみてください。
Q. 15年後に太陽光が譲渡されたあとはどうすれば電気代が下がりますか?
A. 卒FIT後の売電単価は大幅に下がるケースが多いため、余剰電力を安く売るより自家消費するほうが有利になります。蓄電池を後付けして昼間の余剰電力を夜間に使う「自家消費型」への切り替えが選択肢になります。V2Hを導入して電気自動車のバッテリーを活用する方法もあります。卒FIT後の買取先は複数の電力会社が案内していますので、各社の最新情報をご確認ください。
- 昼間の在宅パターンで自家消費量が大きく変わる
- 15年の長期契約の条件・清算金を事前に理解しておく
- 建て得以外の初期費用0円サービスとの比較も参考になる
- 15年後の蓄電池導入・自家消費型シフトを今から計画する
まとめ
建て得の電気代が高いと感じる主な理由は、昼間の発電電力の自家消費が不十分であること、夜間の買電コストが積み上がること、そして建て得でんきの電力量料金が地域大手より高いケースがあることの3点に整理できます。これらは仕組みを理解した上でライフスタイルを調整することで、ある程度対処できる課題です。
まず取り組みやすい行動は、家電や給湯器の稼働タイミングを昼間にシフトすることです。発電量モニターを確認しながら日々の使い方を見直すだけでも、電気代の改善につながることがあります。電気料金プランについては、建て得でんきと地域の大手電力プランを比較し、自分にとってどちらが有利かを確認することをおすすめします。
建て得は長期的な目線で見れば、ZEH住宅の高い断熱性能と合わせて光熱費を抑えるポテンシャルを持つサービスです。電気代の動きに疑問を感じたときは、LIXIL TEPCOスマートパートナーズの公式サイトや電気料金明細を改めて確認し、必要であれば担当窓口に相談してみてください。


